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駅近くの小さなメイン会場は、出し物の準備をしていました。向かいの並べられた50脚あるかないかのパイプ椅子は、それを待つ観客でほぼ埋まっていました。

近くのお好み焼き屋の屋台には、「行列のできる」と書いてあり、見ると本当に行列ができていました。どちらが卵でどちらが鶏なのでしょう? そう書かれているからつい並んでみたくなるのか、並ぶ人が後をたたないから書かれるようになったのか。まあ、お好み焼きやたこ焼きは作るのに時間がかかるので、行列はでき易いとは思いますが。
売られている物をのぞいてみると、小食の人なら尻込みしてしまいそうな厚みと、ペーコンとコーン入りという珍しさ。あらおいしそう。私も列に加わることにしました。

いきなり腹に響くドン、という音がしました。そばのメイン会場で、出し物の太鼓の演奏が始まったのでした。音の大きさにとびあがった屋台の人は「びっくりした」と顔を見合わせて笑い、つられて私たちも笑いました。

太鼓のバチさばきを見、商品を受け取り、代金を払い。そうこうしている間に、雨がぽつりぽつりと落ち始めてきました。

七夕祭りというと、いつも雨がふる気がします。天の川が増水しているのでしょうか。もしかして織姫と彦星は会うことができない……?

いやいや、きっと別の言い伝えがある、と私は想像します。
これは、天の川の水を一時的にせき止めたために、あふれた水が地上にこぼれ落ちてきただけのことであるのだ。
織姫と彦星は浅くなった川を渡って、今年も会うことができた。雨はまた、二人のうれし涙でもある――

雨粒が大きくなってきました。空の上で、恋人たちは肩を抱き合いながら、1年分の積もる話をしているのでしょうか……

駅に着くと、人はさらにごった返して、年齢も少し上がっていました。仕事を終えた社会人は、これから七夕祭りにくり出すのでしょう。携帯電話で落ち合い場所の確認をしている姿や、久しぶりに再会したらしく笑顔で両手を振っている姿があちこちで見られました。
駅員さんは拡声器片手に、交通整理で大忙し。天井に下げられたたくさんのガラスの風鈴が、それをあおるように忙しく音をたてています。
私は濁流のような人々をくぐりぬけ、電車に乗りこみました。

車内は、祭りの余韻をただよわせた乗客で、なんとなくうきうきした空気でした。
これから飲みに行く場所を選んでいるオバサマ4人組(「ビールが350円なの」「あらいいわね、そこ」)のおしゃべりを聞くとはなしに聞きながら、私はなぜか顔に微笑が広がっていくのを感じました。今日みたいな日は、楽しさや笑顔が伝染するようです。

帰ったらすぐにご飯にしよう、と思いました。ニラぎょうざとお好み焼きと、あと昨日のおかずの残りがあるから、それで。
栗栖氏に、お祭りで今日はすごい人だったという話をしよう。不況ではあるけれど、お飾りは去年と同じくらいきれいだったことも話そう。

彦星は我が家にもいます。川はもうありません。

JUGEMテーマ:七夕

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