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梅雨明けなどまだ遠い先の、この町に。
一瞬の青空をぬって、その蝉は来た。

夏を、呼ぶために。
期限は、7日。


蝉は鳴く。夏よ来い、夏よ来い、と。長い直線をひくように。
疲れて羽が止まっても、すぐまた震わせ、鳴き始める。
その、ひたむきさ。

私は彼に問いかける。
なぜそんなに早く生まれて来る?
明日にはまた冷たい雨の日々に戻ってしまうというのに。
なぜそんなに心がきしるような音をたてて鳴く?
ひとりだけでは、誰の耳にも届かないだろうに。
せっかくの短い命。もっと生きやすい時期を選んでもよかったのに。
なのになぜ。

答えず、蝉はただ、鳴きつづける。
夏よ、来い。
夏よ、来い。
夏よ、来い。

下界の騒音にかき消されそうになりながら、細々と夏を歌う、その声に――
私は、夢想する。

7日間夏を呼び、ついにその蝉が死んだら。
きっと次の蝉が出て来、また7日間夏を呼ぶ。
その蝉が死んだら、別の蝉たちが現れ、また夏を呼ぶ。
命の、声のリレー。

共に歌い続ける彼らの声は、やがて雨雲を裂くだろう。いつか真夏の太陽の下で、それは幸せな合唱となることだろう。
人々は、青い空を見上げ、夏が来たと言うが、それが蝉たちの仕業だとは誰も知らない……


私は、姿の見えない蝉をふりあおいだ。
――木々の枝が、強い風にあおられている。
声はしかし、止む気配はなかった。

 
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Comment
埼玉や東京に居た頃は、6月下旬になるとニイニイゼミが鳴き始めました。
その年初めての蝉の鳴き声を聞くと、梅雨空ばかりの日々でも夏は来ているのだと実感します。
たしかにその一番蝉が死んでしまったとしても、次の蝉が鳴き始めて、確実に夏を呼ぶリレーは続いていきますね。
やがて梅雨が明け真夏になる頃には蝉達も大合唱になります。
はまかぜさん、こんにちは。
夏日になりましたね。今日は1日じゅう夏日でした。蝉もすこし前から鳴き始めました。
梅雨のしっとりした風情も好きですが、真夏のワーッと生命があふれた感じもいいですね(蚊だけはご遠慮願いたいですが……)。
  • 空知
  • 2015/07/11 22:21





   
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