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2015.07.13 Monday

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    バラの木

    2010.09.07 Tuesday

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      裏庭に、バラの木があります。
      このアパートに越してきた時からあったので、おそらく前の住人が植えていったのでしょう。
      バラは嫌いではありませんが、好きでもありません。フラワーセンターなどで眺めたり、花束でもらったりするぶんにはいいですが、育てるとなると……。

      だってバラでしょ?

      バラがある庭って、もっと鳥の水のみ場があったりとか、葉陰に陶器の白雪姫の小人がのぞいてたりとか、そういうゴージャスな雰囲気がなければいけないんじゃない?
      それにあの棘。いかにもワタクシに触れるもの万死に値するといわんばかりの。あるいはパンクファッションの元祖というか。きっとそばに寄るたびに、わたしの髪はからみつき、袖には穴が開くにちがいない。指だってもちろん血だらけになる!
      バラって病気になりやすいんじゃなかったっけ? 幹にびっしりアブラムシがついたらどうしよう?

      考えてもバラとはいい関係が結べそうもなかったので、抜いてしまうことにしました。そもそもわたしはハーブが好きで、その裏庭もハーブ園にする予定でした。広さが猫の額ほどしかないため、ハーブだって全部植えることはできません。ましてや野放図に枝をのばし、数年後には他の植物たちを圧迫しそうなバラなんて。

      無慈悲にポキポキと枝を折っている途中で、栗栖氏がわたしの意図に気付きました。
      「かわいそうだから、とっておこうよ」
      「ええ? いらないわよ。邪魔だし」
      「バラだぜ」
      「バラだからよ」
      「まあ、いいじゃないか」

      結局、バラは残されました。
      わたしは空いているスペースにハーブや野菜の苗を植え、バラは黙殺しました。


      その後、バラはつぼみをつけました。つぼみは次々に開いて、枝のあちこちに花を咲かせました。色は美しいピンクでした。

      「あら、きれいね」
      「だろ」
      ハーブの緑一色だった庭に、点々と散ったピンクは鮮やかにうつりました。

      花びらを落としたら、赤い実ができました。
      それでは来年までさようなら――
      と思っていたら、枝にまたつぼみがつきました。

      花が咲きました。
      「狂い咲き?」
      「かなあ?」
      わたしたちは頭をよせあいながら、窓ごしにバラを見つめました。

      せつないほどのバラの咲きぶり。まるで間髪いれずに花をつけないと、わたしにクワをふるって抜かれてしまうとおびえているかのようでした。
      昔飼っていた犬を思い出しました。
      お菓子欲しさに、よくおすわりをしていました。(一発芸です。ほかに芸はできません)
      胸をはって、目をキラキラさせて。それは最高にかわいい姿でした。
      いい子にしてるから、お菓子ちょうだい、ちょうだい!
      犬とバラがダブりました。――きれいにしてるから、抜かないよね? ね?
      「よく咲くねえ」
      「よく咲くなあ」
      「……」

      後で調べたら、バラは年に一度咲くタイプだけでなく、三季咲きとか四季咲きとか、何度も咲くタイプがあるようでした。うちのバラはそれだったのでしょう。植物からのなにか深遠な意思表示ではありませんでした。

      勘違いとわかっても、けなげに何度も咲くバラに、わたしは次第に情が移ってくるのを感じました。
      いつしか、次に咲くのを楽しみに待つようになっていました。


      今では、バラとわたしはいい関係を築いています。
      扱いもよくなりました。黙殺から、黙認へと。

      たまにわたしは、バラにからみついた雑草のつるを取ってあげます。おかえしにバラは、わたしの腕にひっかき傷をこしらえてくれます。
      それでわたしは、伸びすぎた枝を刈りこんであげます。
      でも、根こそぎではありません。

      JUGEMテーマ:バラと暮らす

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