箱根ラリック美術館(3)おまけ
2005.08.30 Tuesday
最近の美術館は、トイレまで手を抜かないので、一見の価値があります。
ラリック美術館のトイレは、天井が高く、広々していて、開放感があります。
もちろん個室もゆったり。膝がつかえるトイレだって世の中にまだある中、この広さには最初びっくりしました。ダンスができるのではないかと思ったほどです。(リバーダンスなら楽勝)
縦に細長くガラス窓があります。見るたびに借景をした掛け軸を連想して、いろんな角度から外をながめてしまいます。けっこう気に入っている部分です(トイレのお気に入りっていうのも変ですが)。
あと、おすすめがレストラン。ちょっと高めですが、おいしいです。
ランチは1,800円。プラス300円でコーヒーが飲み放題になります。パン2個、たっぷりのサラダ、メインディッシュ(付け合せのカリフラワーとタコの温サラダがおいしかった!)。ちゃんと素材の味がして、お腹がふくれて、幸せになりました (^^)。
変ったメニューだと、猪肉のパスタなんてのもあります。こちらは羊なんかよりはるかにクセがなく、食べやすいです。チャレンジしたい方は、ぜひどうぞ。
入場チケットは、1年間は、持っていればレストランと売店が無料で入れます。「ちょっとお茶でも」という時に便利だと思いますので、利用してみてくださいね。
箱根ラリック美術館(2)ガラスの伝道師
2005.08.29 Monday
ルネ・ラリックは、フランスのアール・ヌーヴォー、アール・デコを代表すガラス工芸家です。ガラスといっても、花瓶や照明だけにとどまらず、生活全般にかかわるような製作活動をした人でしたので、館内には、宝飾品、灰皿から車のラジエーター・キャップ、内装した電車(別料金)までもが展示されていました。
特に香水ビンは、ひとつひとつが趣向をこらしていて、すてきでした。有名な蓋がツバのように垂れ下がっているものなどは、優雅で、うっとりと見入ってしまいます。
蛇の髪飾りやトンボの首飾りなどは、「キモきれい」とでもいうような感じ。ちょっと引きつつも、その発想の豊かさに感心してしまいました。
2階にある室内装飾『雀』は、八角形をした、こじんまりした一室です。琥珀色をした木の壁にちりばめられている丸い雀たち。光をうけると、貝のようなおだやかな乳白色を反射させます。これがガラスでできているなんて驚きです。
色ガラス、すりガラス、金属などとの組み合わせ……ガラスのもつ多彩な姿を、ラリックは作り出していました。
箱根ラリック美術館(1)庭のある美術館
2005.08.28 Sunday
箱根・仙石原には、美術館がたくさんあります。ベネチアン・グラスの箱根ガラスの森、マイセン食器の箱根マイセン庭園美術館、サン=テグジュペリの星の王子さまミュージアム。
今回は、ポーラ美術館に行ったついでに、箱根ラリック美術館にも行ってきました。
今年3月にオープンしたばかりのラリック美術館は、湿生花園の隣にあります。
中に入ると、レストランと売店、手入のゆきとどいた芝生。
広い庭には、植えたばかりの植物が心もとなげに根をはり、それでも開館当初に来た頃よりは、だいぶなじんできているのがわかります。カエデが紅葉をはじめていました。
小池では睡蓮が黄色い花を咲かせていて、(もちろんそれを目指しているのでしょう、)ますますモネの庭らしくなっていました。
細い道をたどってくと、木々に隠れるようにして、美術館が建っています。木をふんだんに使った、あたたかみのある建物です。
ポーラ美術館(3)それぞれのブロンズ像
2005.08.26 Friday
会場には、彫刻もいくつかありました。
それまではあまり興味がなかった彫刻。今回、いくつか見比べてみて、はじめて面白いなぁと感じました。
彫刻で有名なのはロダンですね。彼の作品もいくつか出展されていました。良かったのが『カレーの市民(第二試作)』。
ゆったりとした布を身につけた男たちが、頭をうつむけて立っていたり、腰をかがめたりしています。ただそれだけなのに、なんというのでしょうか、全身で沈鬱ななにかをかもしだしていました。
両手で頭をかかえている男は、絶望しているようです。書物を手にした男も、古代の英知を学んでいるというよりは、悩みに沈んでいるようです。
感情を全身で表現しているさまは、言葉を使わないパントマイムのようで、見ている者にうったえるものがありました。1mに満たない彫刻なのに、こんなに伝える力がある。さすが巨匠だと改めて感動しました。
後で調べたら、街を包囲され、投降することになったカレーの市民を描いた(彫った)ものでした。本物は2mだそうです。
さて、ほかにルノアールの作品の、女性のブロンズ像がありました。
こちらはルノアールの絵がそのまま立体になったようでした(あたりまえですけど)。丸みをおびた、ぽってりした全身。太めの、ちょっと長すぎる二の腕。深刻なロダンとうって変わってほのぼの系のルノアール。なんかおかしかったです。
ブロンズは、絵のパステルカラーでまろやかな雰囲気はなく、ただ真っ黒な体をてらてらと光らせていました。ルノアールっぽさが少し足りないかな? 白い大理石のほうが合っていたかもしれません。
ドガのブロンズ像。踊る娘。
動きの一瞬をとらえたその姿に、はっと目をうばわれました。スリムな肢体がいまにも動き出しそうです。顔の表情がどう、指の表現がどうというのではなく、全身の動きをぱっとつかみとって彫刻にしたかんじ。生き生きした躍動感がみなぎっていました。
ドガは一連の踊り子の絵が有名ですが、ブロンズでも「動の美」を的確に表現していたのだな、と、その才能に感心しました。
他にもブロンズの作品があったら見てみたいと思いました。
ブロンズ像にも、作家によって雰囲気がまったく違うのがわかりました。絵画と同じなんですね。とても面白かったです。
ポーラ美術館(2)ルノアール、ルドン
2005.08.25 Thursday
ルノアールの作品も、1フロアを使って展示されていました。
女性や娘、子供の体のもつ持つふくよかさ、やわらかさ。優しげな女性らしさを、あのなでるようなタッチで表現しようとしたのでしょうか。まわりの木々さえもしなやかです。
面白かったのは、静物を描いたものにも、それが出ていたこと。
花をいけた花瓶の絵などは、花はどうということがなかったのですが、花瓶は丸くつややかで、妙ななまめかしさを感じてしまいました。
そういえば、別の展覧会で見た桃の絵も、同じような色っぽさがあり、友人と笑ったことがありましたっけ。
あとは、ルドンの色が心に残りました。
『イカロス』のオレンジ。
『アネモネ』の花の白、赤、花瓶の水色。
『アポロンの二輪馬車』『帆船』の、空の色と、物の茶色との組み合わせ。
色が輝いているような、そんな錯覚をおぼえました。