草むしり
2005.09.28 Wednesday
心がどうしようもないものではびこってしまったとき、私は草むしりをします。
ほおっていたために、庭は雑草だらけ。本来の姿がわからなくなるほど庭を圧倒していて。
深く根をおろし、ぬいても根の先が残ってしまう雑草。
根をたどり、土をほぐし、ぬいていきます。
ひとつ、ひとつ。
他の草花とそっくりで、手にするのをためらわせる雑草。
隠れていた花が、姿をあらわします。
ひとつ、ひとつ。
のびた茎からまた根をはり、足がかりにして増えている雑草。
ひとつ、ひとつ。
チョウが飛んできました。
ミミズがあわててもぐっていきます。
ここに種をまきましょうか。
シャベルが土をうがつ音が、ひびきます。
庭に。私の心に。
池澤夏樹『南の島のティオ』
2005.09.16 Friday
南のある小さな島に、ティオという男の子がいました。お父さんはホテルを経営していて、ティオはお父さんの手伝いをしたり、友達と遊んだりしていました。
これは、ティオが出会った色々な人たちのお話……
ファンタジーではありますが、いわゆる魔法や妖怪が出るファンタジーではなく、まるですぐそこにある島の、ちょっと不思議で、ちょっとおかしみのある話を聞かされている、というかんじでした。
絵ハガキを売る男がくれたハガキ。いじわるをする島の神様。イタコのようなおばあとの会話。道路にあるいいつたえ。葉っぱをふいて屋根をつくり、木を彫ってカヌーをつくる生活。
目に浮かぶような、子供たちの海での遊び。大地に根ざした想像力。
それは、著者がハワイや沖縄に住んでいたことと、無関係ではないでしょう。
私にも、島への招待のハガキがティオから届かないかな。
青い空を見上げながら、本をとじました。
第41回小学館文学賞受賞。
文春文庫(470円)
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