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2015.07.13 Monday

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    主観的には

    2009.03.26 Thursday

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      栗栖氏の歯が抜けました。正確には、差し歯が。
      歯磨きでフロスをしていたら、引っかかってしまったようです。

      見せてもらいました。白い歯並びの横に、1本分の隙間が出来ていて、そこに差し歯の細い土台が、葉が落ちきった木みたいにぽつんと生えています。
      本人は「格好が悪い」と嫌がっていましたが、私は喜んでながめていました。
      まるで乳歯が抜けた子供みたいです。かわいい。

      他人には、この口は間が抜けて見えるでしょう。万が一かわいく感じたとしても、笑いだしたい気持ちが心のどこかに絶対あるはず。
      でも、私は胸がキュンキュンしました。もう普段にも増してかわいい!

      それで思い出しました。
      自分のことです。

      容姿にコンプレックスのあった子供時代。大きくなってもコンプレックスは変わらず、むしろ強くなっているくらいでした。両親は「気にならない」と言ってくれたけれど。
      きっとそれは「親の欲目」。
      社会人になり、栗栖氏に出会います。彼は私のコンプレックスの部分を認めた上で、「そこが逆にかわいい」と言ってくれました。
      それに救われたけど。その言葉はたぶんリップサービス。
      良く見えてしまうのは、「アバタもエクボ」だからでしょう……。

      ――そうだけど、そうじゃない。
      今回、反対の立場になって、分かりました。
      一般的には平凡な顔立ちの栗栖氏。でも私にはハンサムです。
      そして栗栖氏は、歯が欠けてもかわいかった。最近目のわきにカラスの足跡ができたり、お腹が出てきてますが、私にとってはハンサム度が増して見えるだけです。
      それは栗栖氏だから。ダーリンなら、みんな素敵なのです。

      それならば、逆もあるのだろう、と思いました。
      平凡以下の顔立ちの私でも。両親にとってはかわいい娘だったのでしょう。栗栖氏にはかわいい奥さんなのでしょう。
      私が両親を美男美女と見たり、栗栖氏をハンサムな王様だと信じるように。

      きっとそれが、家族というもののマジック。たぶん、だから私たちは夫婦なのだろうし、親子なのだろうと思います。

      客観的には、私たちの外見は、十人並みです。でも、主観的には、世界一すてきなゴールデンカップルです。
       

      ロウソクの灯を 消す前に

      2009.03.24 Tuesday

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        ロウソクの光の向こうの、家族を見ながら。

        ――みんなが、これからも楽しく、元気でいられますように――。

        自分のことを願わなくなったのは、いつからだろう……?

        らくがき

        2009.03.16 Monday

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          買い物リストを書くための、ホワイトボード。
          今ではただの落書きボードと化しています。

          相手の絵に落書きして喜んでいると、いつのまにか追加で落書きされてて。
          たあいないやりとりが、とても楽しい。
           

          この写真は、栗栖氏がカレーを作ってくれた時のもの。
          私が夕飯作りを休めるようにと、大鍋にどっさりこしらえてくれました。おかげで楽だったし、とてもおいしかった(闇カレー風で、たまにふしぎな具が出てきましたが)。サンクス!

          沈丁花

          2009.03.13 Friday

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            スーパーで買い物をしたら、ついあれもこれもと欲を出しすぎて、大袋2個になってしまいました。その前にもいろいろ買い物をしていたので、手の袋は3つも4つも。
            重さで腕がぬけそうになり、自己嫌悪にかられながら少し歩いては休み、歩いては休みして進んでいました。

            気が付くと、ポケットの携帯が鳴っていました。
            栗栖氏からでした。
            「まだ帰宅途中?」
            「うん、買い物をしてたら遅くなっちゃって」
            「帰ってこないから、心配になってさ」
            さっき帰るコールをしてから1時間くらいたっていました。
            「ごめんね。もうスーパーを出たから、あと少しで着くわ」
            「今どのへん?」
            「ええと……スーパーの交差点を曲がったあたり」
            「迎えに行くよ」
            「いいわよ、もうあと少しだし」
            スーパーから家まで徒歩で10分ほどの距離です。
            「もう出てる」
            「え?」
            「すぐそこ」
            「え??」

            次の交差点に、それらしき人影が立っていました。
            信号が青になったところで、横断歩道を渡り、こちらに歩いて来ました。やはり栗栖氏でした。
            「またこんなに買いこんで」
            苦笑して、腕が痛くて動けない私の手から、大きな袋をひょいと取り上げました。もう1個の大袋も。
            「2個は重いから、私が」
            止めましたが、
            「1個だけだと、バランスが悪いんだ」
            と妙な理由をつけて、両手に袋を下げ、すたすた元来た道を歩いていきました。

            私は軽くなった体で、残った小さな袋だけ持って、彼の後ろを着いていきました。
            部屋着のまま来たのでしょうか、彼の紺のコートの首から、鮮やかなオレンジ色のフリースのフードがちょこんとのぞいていました。
            私が笑うと、「暗いからいいんだよ」とすました顔をしていました。

            夜の空気は、やや湿り気をおび、春を感じさせます。
            しばらく黙って歩いていた栗栖氏が、ふと顔を向け、
            「沈丁花だ」
            と言いました。

            どこかの家の庭先にある沈丁花の香りが、漂っていました。風があるのでしょうか、気まぐれに鼻をかすめていきます。
            「ああ、本当に沈丁花」
            深く吸いこむと、疲れがどこかへ消えていくようでした。
            「ここに来て、初めて沈丁花の香りを知ったなあ」
            雪国育ちの栗栖氏。北の土地には、沈丁花は生えていないのだそうです。きっと寒さにやられてしまうのでしょう。
            「仕事に行く途中でも、この香りがたまにするんだ。いい匂いだな」
            「私も大好きなの、沈丁花」
            深く沈みこむような、それでいてすがすがしく心を洗い清める沈丁花の香り。低い静かな鈴の音が聞こえてくるようです。

            「この香りをかぐのも、もう3回目になるかな?」
            「そうね、もうそんなになるわね」
            栗栖氏が私の住む町に引っ越して来て、3年が過ぎようとしています。長かったような短かったような。
            最初のころは、栗栖氏はこの土地になじめず、苦労していました。やや閉鎖的な土地柄、狭苦しい町並みや道路、違う気候……。
            見ている私も辛かった。2人で必死で支えあっていた、あの頃。

            いま沈丁花を探している栗栖氏の横顔は、おだやかです。
            「金木犀って、いつだっけ?」
            「秋だったかしら」
            「あれもいい匂いだな」
            「いい匂いね」
            「桜はそろそろかな」
            「九州のほうで咲き始めたって」
            「じゃあ、もうすぐだ……」

            2人でゆっくり家路を歩いていきます。栗栖氏は筋トレと称し、スーパーの袋をダンベル代わりに持ち上げています。たまに振り回して、私に止められたりして。
            花の香りが流れていきます。

            この土地が あなたに優しく ありますように――

            3年前から、ずっと願い続けている、思いです。
             

            命の色・2

            2009.03.11 Wednesday

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              褪せゆくだけの街並みに、花は今日も 色を生む。