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2015.07.13 Monday

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    2010クリスマス(5)銀座

    2011.05.30 Monday

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      飲み会の場所は、銀座ファイブの地下1階、ラ・スコール。ぎりぎりに着いたので、みんな集まっているかと思ったら、幹事のKさんだけがぽつんと座っていました。
      「あら? 他のみんなは?」
      「まだなんですよ」
      時計を見ると、19時になるところです。
      「時間、合ってるわよね?」
      「まったくなにやってるんでしょうね。土曜日だってのに」
      「みんな仕事?」
      「いや、そんなはずは」
      まあいいや、どんどん始めてしまいましょうか、と勝手に注文を始めるわたし達。そうこうするうちに、仲間がばらばらと到着してきました。やあやあお久しぶり。注文のピッチも上がります。

      ラ・スコールはベトナム料理を出すレストラン。ベトナム料理が初めてのわたしは、メニューの説明を読みながら、ふむおいしそうとつぶやいたり、眉をひそめてみたり。
      「フォーって、聞いたことあるわ」
      「美味いですよ」
      「おすすめは?」
      「パクチー・サラダ。俺、ひとりで1皿いけます」
      「パ、パクチー!?」
      わたしはパクチーが大の苦手です。
      「大丈夫さ」ととなりで栗栖さんが明るく力づけました。
      「香菜だと思えばいいんだよ」
      「ああ、そうね……って、同じじゃん!」
      パクチーだめなのよー、と泣きをいれていると、
      「大丈夫」とまた栗栖さん。
      「コリアンダーだと思えば」
      「そっか……いや、それも同じじゃん!」

      久しぶりに会うメンバーです。お互いの近況報告に花が咲きます。
      わたしは耳を傾けながら、どうしようかな、ともじもじしていました。言おうかな、黙っておこうかな。今年はわたしも大変だったんですよ。実はガンになっちゃいましてね。でも治ったんです。
      病気自慢はしたくない。けれど隠しておくものでもない。うーん。
      なんとなく言いそびれて、まあいいか、と思い始めていたら。
      「この人も、今年は大変だったんですよ」
      栗栖さんが、さっとわたしの頭に手をのばし、かぶっていた帽子を取りました。それまでずっと、朝からかぶっていた帽子でした。

      みんながあっと声をあげました。
      「どうしたの……」
      わたしの髪の毛は、ベリーショートと言うにはまだ短すぎる長さでした。
      「実はガンになっちゃって」
      「えーっ」
      言えた。なんとなく、胸のつかえが取れました。

      説明を始めると、実は……とまわりからも出てきました。
      Mさんのご主人は脳で倒れて、現在もリハビリ中。治りかけたところでまた倒れたそうで、もう無理だと何度も思ったそうです。
      「で、今は……?」
      「言葉はちょっと不自由だけど、ほとんど元通り」
      「それは良かったですねえ」
      「健康って大事よね」
      「実感しました、それ。本当に」

      ひとしきり家族の健康を話したあと、わたしたちは話題を、最近はやっている映画の話に移しました。


      閉店まで飲みました。
      わたし達はよいお年をと口々にあいさつし、解散しました。

      「ありがとう」
      駅までの道すがら、わたしは栗栖さんに言いました。
      「みんなに打ち明けるタイミングを作ってくれて」
      「言いにくそうだったからね」
      「でも、もし治ってなかったら、言う勇気がなかったかもしれない」
      「治ってよかったな」
      「うん」

      ホテルまでの電車の中は暖かく、仕事上がりのけだるい充足感と、ほろ酔いの空気を漂わせていました。
      乗客はそれぞれのクリスマスに、静かに思いをはせているようでした。

       
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      2010クリスマス(4)チャリダーご一行様

      2011.05.29 Sunday

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        帰り道。ベロタクシーのお兄さんがふうふう言いながら登った坂を、ゆっくりと下りていきます。以前も来た道を、またこうして歩けるのがうれしい。
        ビタミンウォーターの自動販売機。歩道側に並んでいるお地蔵さんたち。石柵に彫られた名前。増上寺はなにか催しをしているらしく、境内は明るく照らされています。
        ひとつひとつが、懐かしいものでした。

        車道に出ました。
        一気に広がる道路、車、バイク、人。街灯にヘッドライト。音。
        「おお、にぎやかだ」
        「戻ってきた、って感じね」
        活気あふれる街に生命力を感じ、なんとなく笑ってしまいました。

        ふい、と自転車が、車道を走っていきました。また1台。どうやらツーリングの団体のようです。
        「今日は歩道が混んでるからね」
        「楽しそう」
        どこに行くのかな? と眺めていて。
        乗っている一人の服の色が、目が止まりました。
        「あれ? あの服……」
        全身が赤い。袖口と裾が白くフワフワしています。あれはもしかして……
        「サンタさん!」
        え? なになに? と言う栗栖さんに、自転車を指してあげます。
        「本当だ」
        次に来た自転車も、サンタの格好でした。こんどは帽子つき。どんどん赤い人が走ってきます。
        なんと、サンタクロースの自転車集団でした。

        いろいろな格好がありました。
        基本は上下赤のサンタ服らしく、帽子つき、袋つき、白ひげ付き、とバリエーション豊かです。普通の服で、ただ色が赤いだけの人もいました。
        「わあ……」
        思わず笑顔になってしまいました。
        サンタ服のうえに、点滅する電球を巻きつけて、全身ピカピカさせている人もいました。
        ひとりだけ茶色で、トナカイのかぶりものをしていました。
        (ツリーを頭にかぶっている人がいたような気がしますが、ちょっと記憶があいまい。)
        10人以上いるでしょうか。みんなすごい勢いで自転車をこいで、目の前を猛スピードで横切っていきます。
        「楽しい」

        私たちが身をのりだしているのを見て、サンタに気がついて目を丸くしている人も出てきました。指をさし、笑い声があがります。
        全身でおかしさをふりまいているサンタ達の中で、恥ずかしそうは表情をしているサンタもひとりいました。
        夜の車道、クリスマスイブ。

        夢のような光景でした。彼らは急に現れ、あっという間に走り去っていきました。

        信号が赤になりました。横断歩道を、我に返った人々が渡り始めます。
        私と栗栖さんは顔を見合わせました。ふふ、となにか秘密を共有する笑みを交わして。
        「行こうか」
        「うん」

        これが今年の、クリスマス・プレゼントです。

         
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        2010クリスマス(3)東京タワー

        2011.05.23 Monday

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          息をはずませているお兄さんにお金を払うと、ベロタクシーは来た道を帰っていきました。

          降りたところは、交差点でした。ここから坂がもっと急になります。
          「ああ、ここだったんだ」
          すぐ目の前に、見覚えのある鉄塔がそびえていました。ライトアップされて、人々がそこに向かっています。
          東京タワーでした。
          「あの人、途中までしか行けない、なんて言ってたけど」
          「ここまで来てくれれば御の字だね」
          同じように見に来た人たちの流れに混じって、私たちも坂道を上がっていきました。


          近づくにつれ、タワーの足元に、群集のシルエットが浮かび上がってきました。キラキラ光る照明や音楽の下、親子やカップルが、そぞろ歩いています。子供たちは、アトラクションに歓声をあげています。
          「すごい人だね」
          「タワーに昇る?」
          「うん」
          入り口から、行列がのびているのが見て取れました。
          「あれ?」
          行列は外へのびています。建物の外のぐるりの闇に目をこらすと、行列が浮かび上がってきました。100人以上はいるでしょうか。辛抱強く立っています。
          「うわあ」
          受付でたずねると、1時間半待ちとのこと。
          「どうしよう」
          「これから飲み会だし……」
          それだけ待って、昇っていたら、時間が足りません。
          チケットを確認すると、期限はありません、いつ使っても良いですとの返事。
          「また今度にしようか」
          「そうね」
          私たちは東京タワーを後にしました。

          少し離れたところで振り返りました。タワーはオレンジ色に輝き、それ自体がクリスマスツリーのようでした。空に小さく光る星も、ライトアップに一役買っていました。
          おもちゃ箱のような音楽が、かすかに聞こえていました。
           
           
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          2010クリスマス(2)ベロタクシー

          2011.05.17 Tuesday

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            ベロタクシーに乗りました。観覧車を半分にしたような、なんとも面白い形です。
            私たちが座ったのを確認すると、お兄さんはブランケットを出して、ひざに掛けてくれて、
            「それじゃ、出発しますね」
            自転車にまたがり、こぎ始めました。

            ベロタクシーは初めしずしずと、それからしだいに速度を速めていきました。
            静かでした。車のようなエンジン音もなく、人力車のような振動もなく(確認してませんが、あれは揺れるのではないでしょうか)。

            すっかり暗くなった街をながめながら、私たちはのんびり進んでいきました。横をふきぬけていく風は自転車そのもので、ほおをそよそよとなでていきます。車だとあっという間に流れていく風景も、今日はひとつひとつ見ることができます。
            「足が楽だね」
            「高いと景色が違うね」
            以前も2人でこの道を歩きました。ああ、あの公園は見たことがある。その由緒ありそうな建物は、たしかレストラン。

            自転車にまたがったお兄さんは、ふだんは車のじゃまにならないよう、歩道よりを走ります。が、信号機が赤になると、停止線の前で、他の車と並んで停まります。
            自転車のような、自動車のようなベロタクシー。
            増上寺のある交差点を曲がるとき、ベロタクシーは車と前後しながら、車道の真ん中を走りました。過ぎると、自転車に戻って歩道ぎりぎり近くまで寄り、私たちがよくお寺を見れるよう、ゆっくり走ってくれました。

            ベロタクシーは、お寺の脇の道をひょいと入っていきました。車では入りにくいところです。
            そこから急な坂道に。
            「大変じゃないですか? 降りましょうか?」
            と聞くと、
            「あ、平気ですよ。ぎりぎりまで行きます」
            と頼もしい返事。でもタクシー本体の重みプラス2人分の体重です。はらはらしていると、
            「たぶんこれ、電動アシストだから」
            と栗栖さんが言いました。え、そうなんだ。
            「そうなんですよ」
            そう言いつつも、お兄さんは立ちこぎを始めました。片足に全体重をかけて、こんどは反対の足。よいしょ、よいしょ。

            後ろから押してあげたい、と思いつつ固まっていると、
            「じゃ、すみません、ここまでで」
            ついにタクシーが停まりました。

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            2010クリスマス(1)初めての遠出

            2011.05.14 Saturday

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              (はじめに:2010年の話なので、「今年=2010年」「今日=12/24」です。)

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              病院以外は遠出をしなかった今年1年。最後の月に入るころ、友人から「みんなで飲みませんか?」と飲み会のお誘いメールが届きました。
              これは外出のリハビリにもってこい(?)。夫婦で、銀座まで行くことにしました。
              栗栖さんは飲むと眠くなってしまう人なので、「長時間、電車に揺られていたくない」と近場の宿泊を希望。都内のホテルを予約しました。これで帰りも一安心です。

              久しぶりの電車は、週末だからか空いていて、乗客たちもなごやかな顔を見せています。昔通勤に使っていた頃はいつも混んでいて、乗り降りするたびにもみくちゃにされたっけなあ、なんてことを思い出します。
              栗栖さんは「足は大丈夫かい?」と座りっぱなしの私を心配しつつ、DSで英語の勉強に熱中。だいぶ単語を覚えたそうです。

              ホテルにチェックインしたら、朝食のクーポンといっしょに、東京タワーのチケットを渡されました。そうそう、たしか料金が変わらないからと、そんなプランを申し込んだんでした。
              飲み会までまだ時間があるし、ちょっと見てきますか、と2人で意見が一致。重い荷物は部屋に置いて、出かけました。

              浜松町。結婚してすぐの頃、来たことがあります。
              今日の浜松町も、あの時と同じ夕方でした。夜の気配が濃厚で、夕焼けが最後の明るさを消しつつあるところ。街灯がともり始めているのも同じです。
              それでも前と違うのは、クリスマスのイルミネーションが加わっているからでしょう。街ぜんたいが明るく、道行く人もカップルも多いようです。
              それを栗栖さんに言うと、
              「俺たちもカップルだよ」
              と笑われました。
              「カップルって、恋人同士のことを指すんじゃないの?」
              「夫婦だって男女なんだから、カップルさ」
              それでは、と私たちもカップルらしく、腕を組んで歩きはじめました。

              「いかがですか」
              急に声をかけられました。
              「どこへでもお連れしますよ」
              脇を、若いお兄さんが立っていました。タクシーの運転手にしてはスポーティな格好です。タクシーもありません。
              代わりに、背後に楕円というか三角形というか、妙な形の幌のついた自転車が停まっていました。
              あ、これ見たことある! 最初はJAFの雑誌で、日本でも導入したという記事。それから六本木では、ちょうど降りるお客さんがお金を払っているところ。
              「ベロタクシー!」
              思わず声をあげました。
              「ベロタクシーだね」
              栗栖さんもうなずきます。
              「間近で見るのは初めてだわ」
              「乗ってみる?」
              「値段はどのくらいかしら?」
              たずねると、大人1人300円×人数分、0.5kmを越えたら、0.1km毎に+50円だそうです。2人で東京タワーだと、坂道なので途中まで、料金は1500円位(記憶によると)。
              「うーん……」
              悩んでいると、
              「試しに乗ってみない?」と栗栖さん。
              「クリスマスの記念にいかがですか」お兄さんが上手にたたみかけます。

              乗ることにしました。

               
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