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2015.07.13 Monday

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    さよならを言いたかった

    2012.03.13 Tuesday

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      あれから1年がたちました。
      休日だったため、世間では慰霊、被災地応援など、さまざまな催しがあったことと思います。
      わたしもなにか書こうとして……結局、翌日になっても手が動きませんでした――。


      「死は突然やって来る。テロリストのように」
      昔読んだ言葉です。

      さっきまで普通に笑い、歩き、生活していた人々が、次の瞬間、いっせいに冷たい骸(むくろ)になってしまう。
      日常とは、なんともろいものでしょうか。平和とは、なんと危ういものであるか。
      祖母も、ある日倒れたきり、10年間意識が戻ることなく、亡くなりました。

      「さよならを言いたかった」
      そう思います。
      亡くなった方々も、わたし達も。お互い。
      せめて一言、さよならだけでいいから、と。

      いえ……
      「ありがとう」のほうが、いいかもしれません。
      生きていてくれて、ありがとう。同じ日本に生まれ、いっしょの時を刻んでくれて、ありがとう。
      ありがとう……。


      この不条理な世界で、空だけは青く澄み。
      たむけられた香の煙がはかなげにゆれ、風となって還っていきます。

      伝えられなかった、言葉とともに。

       

      関東人(3)

      2012.03.02 Friday

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        「でも……」
        自分用のコーヒーをいれながら、私は栗栖さんの手に触れて、
        「体は冷えないわよね」
        彼の指先は、じゅうぶん温かみがありました。氷の指先に熱を奪われ、ひゃっと栗栖さんは手をひっこめました。
        「相変わらずキミは冷え性だなあ」
        「寒い寒いとは言っても、ちゃんと自家発電ができてるわよね」
        そりゃあね、と彼は手を開いたり閉じたりしながら、
        「ある一定の気温になったら、自家発電のスイッチが入るようになってるんだ」
        私は感心して、
        「それは北国の人みんなができるの?」
        「生まれたときからだよ」
        「いいわねえ」
        「遺伝子に組み込まれてるのさ」
        それはすばらしい、それができている間はまだあなたは北の男だ、という話をしているうちに、出勤の時間になりました。

        雪はまだ止みそうにありません。
        前の道路を、小学生たちが走っていきます。小さな長靴が、雪をけちらしています。後にはぬかるんだ足跡が点々と残っています。

        栗栖さんは白い息を吐きました。
        「こんな大きな雪は嫌だなあ。べしゃべしゃしてて、しみこむし、歩きにくいし」
        「そうでしょうね」
        「北海道では雪は細かくさらっとしていて、体に付かないんだよ」
        「滑りやすいかも。気をつけてね」
        「慣れてるから大丈夫」
        「それもそうね」
        歩きにくさに同情していると、でもね、ちょっと嬉しいんだよ、と栗栖さんはドアを開けながら、にっこりしました。

        「北国ではね、ボタ雪が降ると、春が近づいてきた証拠なんだ」

        そう言って、北国の心を持つ、関東の男は、出勤していきました。


        雪は音をたてて降り続けています。
        空気は底冷えのする冷たさです。
        今日はうるう日の2月29日。

        明日から、3月です。

         
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        関東人(2)

        2012.03.01 Thursday

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          とたんに元気になる関東人です。

          階段をいつもの2倍速で下りて、
          「栗栖さん、雪だよ!」
          「おお、雪だね」
          栗栖さんは、タバコをぷかりぷかりと吸いながら、おはようと言い、
          「またよく積もったなあ」
          ややうんざりした顔で窓の外を見やりました。
          北国出身の彼にとって、雪イコール雪かきです。関東の人間にはうかがい知れない重労働を、思い出しているようでした。

          この冬は例年になくよく雪が降りました。今日はいちばん積もったようです。

          「音がするから、もう雨になるんじゃないかしら?」
          「いや、雪のほうが増えてきているみたいだよ」タバコを耳のあたりで振りながら、「音がだんだんしなくなった」
          「あら本当」
          たしかに、降ってくるものが白さを増している気がしました。

          「今日は冷えるなあ」
          栗栖さんがぶるっとして両腕をこすりました。
          「寒い?」
          「うん」
          「前は大丈夫だったじゃない」
          「もう俺は関東人になったんだよ」
          「ええ?」驚いて笑ってしまいました。「いつ? あれほど寒さに強かったあなたが」
          そうなのさ、と栗栖さん。
          「今年かな? それとも去年? ま、とにかく俺は、寒いのがダメになった」
          「まああ」

          なんと、11月でもTシャツに短パンで歩いていた北の男は、滞在7年目にして、ついにやわな関東人になってしまったのでした。

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          関東人(1)

          2012.02.29 Wednesday

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            雨の音が聞こえる。

            携帯の目覚まし時計に起こされて、まず思ったのはそれ。
            ああ今日も雨か……。

            もうちょっと眠っていたいと、意地汚く布団にしがみついている私のとなりで、栗栖さんはエイヤッと布団を蹴飛ばして起き上がります。夏は私が早起きですが、冬は立場が逆転です。
            足音が、部屋を横切り、階段をトントンと下りていきます。

            電子レンジがうなる音。コーヒーを温めているのです。
            チーン。

            換気扇の回る音。目覚めの一服。

            横で、栗栖さんの目覚ましが鳴り始めます。主の代わりに止めて。
            「……」
            私も起きなきゃあ……。
            しぶしぶ、起きる支度をはじめます。

            ポツ、ポツと屋根をたたく音が続いています。
            ああ、助かった。今日はオフだ。
            最近、単発のバイトを始めました。週2日ほどで、今日はたまたま休みの日でした。
            さあて。予定していた洗濯はできないから。あとは、朝のゴミ出しか。
            どのくらいの雨かな? ひどく降ってなければいいけど。

            カーテンを開けて、雨戸を開けて。
            「あ!」
            思わず声をあげました。

            外は、いちめんの雪景色でした。
             
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            災害

            2011.03.22 Tuesday

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              地震、津波、原発事故と、立て続けに起こった災害に、言葉もありません。なんということが起こってしまったのでしょう……。現実とはとても思えないですが、目を覚ませばまた昨日の続き。ああこれは夢ではないんだと、毎日辛い朝を迎えています。

              この災害が収束したとしても、おそらくこれで終わりではないでしょう。
              私の住む地域でも、大きな地震がありました。宮城の地震とは関係がないそうです。

              わざわざ引越して来てもらった栗栖さんには、本当に申し訳なく思っています。最初は違う土地でのストレスと、慣れない仕事。仕事が安定してきたかなと思ったら、妻の病気。治ったかなと思ったら災害。
              これからどうなるのか、まさに一寸先は闇のような状態で。
              風におびえる子供のような気持ちです。

              それでも、今日生きている。家族がいる。
              わたしたちは光のある方向に向かって、手を伸ばしていかなければいけないのでしょう。1歩ずつでいいから。
              本当に大切なものは何か、もういちど見直しつつ。